「まちの縁側」
敷地は近鉄南生駒駅から程近いのどかな住宅街。
背面には生駒山、道路向いには学校のグラウンドが広がる。
クライアントの事業拠点である隣接地には、平屋の駄菓子小屋と福祉事業所「キッチンつきあたり」が建つ。
新施設に求められたものは以下の3点。
・既存施設のカフェ機能を移設して地域との繋がりをより深めること。
・新施設に用がない人も気軽に立ち寄れる居心地良い場所をつくること。
・新施設での飲食が駄菓子屋を通じて子供たちへの寄付に還元される「まほうのだがしやチロル堂」の仕組みをこの場所でも実践すること。
そこで私たちは、様々な人が垣根を越えて交流し自由に行き交い憩う場所、まるで公園内の東屋のようにまちに開かれた建築をつくりたいと考えた。
木架構表しのフレームにガラスを嵌めただけの裸の躯体に、既存施設に準じた切妻屋根と下屋が連結する大らかな一枚屋根を被せた
耐力壁は地盤の高い隣地沿いに纏め、他面は開閉建具で開け放つことで地域の方がどこからでも出入りできる設えとした。内外に跨ぎ設けたベンチや小上がりも、この建築と街が繋がるためのきっかけの一助となる。
学校を終えた子供たちが駄菓子屋に列を成し、パンが焼けた匂いに誘われ地域の方がふらっと立ち寄り、縁側に座る。
敷地を超えて地域と繋がり、あらゆる人を受け入れる寛大な空気が流れる建築に育ってほしい。













構造材を組んだオリジナルベンチ。安定性向上のため設けたフットレストにより両面使いが可能。子どもたちには遊具にも見えて様々な使い方を楽しんでいる。

規則性を持った構造グリッドに対しサッシライン(外皮)をズラす事で建物コーナーを開放。広場に向かって子どもたちが走り抜ける。

平面図兼配置図
ズラすことで生まれた「手放す空間」
地域の人々が自由に集う場所を目指し、建築ボリュームはまず段差の少ない平屋を選定した。ゾーンニングでは、運営上必要であった厨房と物入を地盤の高い隣接地沿いに集約し耐力壁を並べた。その他のエリアは、最小限のブレースに留め、三面を開閉可能な木製サッシで覆って内外自由に往来し寛ぐことができる客席を適正スケールで配置した。
構造体は、柱を一間半グリッド状に規則的に配置し、その上に棟木・母屋・軒桁と垂木を掛けたシンプルな切妻の主屋に、縁側へと伸びる吹き寄せ垂木が特徴的な下屋を接続させた。
機能性と構造との調整過程で、空間ボリュームから導かれた適正なサッシライン(外皮)と大屋根を指示する構造グリッドをズラしたことで、建物のコーナーを開放し豊かな回遊動線を確保した。
またこのズレにより下屋が内外に横断し、スケールダウンした居心地の良い半外的屋内空間が生まれた。このほか、サッシライン上にベンチや小上がりを設けて建具を全開にすることで、施設と街との接点を加えた。
建物が完成し訪ねると、学校帰りの子供達が内外を駆け回り、思い思いの場所で過ごしていた。そして、その様子をスタッフや街の人たちが優しい目で見守り寛いでいる。ベンチや小上がり、建具など空間の使われ方もみな自由で、設計者の意図や期待を遥かに超えて豊かだった。
これはきっと設計途中にクライアントの理念や取り組みを聞いているうちに「作り過ぎない」ということをどこかで意識していたのだろう。
施主との対話から生まれた「手放す空間」といえるのかもしれない。

開放した建物のコーナー。欄間方立部に仕込んだスチールロッドで耐風梁を吊り上げてスラストを抑制

グリッド状に整列する構造体とグリッドからズラしたサッシライン。下屋を形づくる吹き寄せ垂木が内外を貫く。中央のレンガタイル壁の部屋がパン工房。大屋根と切り離し小さなHUT(小屋)として存在させた。災害時、地域のための炊き出し場も担っている

アイソメトリック図

断面詳細図








キッチンつきあたり・駄菓子小屋を含めたイベント時の様子。広場にテントにも建ち、街全体が賑わう。






