半世紀ほど前に米穀店として建てられた8坪の平屋の改修。
物件を譲り受けたのは2020年のこと。そこから設計図を描き内部解体を始めて、工事の途中に仲間の協力に助けられながら自分自身でも少しずつ工事を進め、2024年、コーヒーが飲める観葉植物店としてオープンしました。
コンビニエンスストアやネットショッピングがなかった時代、人々の生活の中心的な役割を担っていたお米屋さん。その後、時代と共に商流が変化し、お米の販売も米穀店からスーパーや量販店、コンビニエンスストア、ネットショッピングなどに変わっていきました。
戦後の高度成長の中で大活躍したこの小屋を、単純に壊して更新するスクラップアンドビルドの思想をやめ、知恵を絞り手間をかけて残す事で、新たなまちのコミュニティ拠点として再生したいと思いました。
マーケティング上は、この小屋は旧耐震で残す価値がなく敷地も小さいため、近い将来解体されて2台ほどの駐車場になっていたのではないかと思います。
住宅街の駅までの交通動線に建ち、およそ半世紀の間、行き交う人々を見届けてきた小屋。
この小屋を建てられた先代のお米屋さんの思いと、このまちで育まれた人々の記憶を継承する場所として、小屋に『キチ(基地、機知、吉)』と名付け、次の世代へと繋いでいきたいと思います。














Photo by Eiichi Matsuyama

改修前の「キチ」