近鉄生駒駅とケーブルカー鳥居前駅に直結する商業施設「グリーンヒルいこま」は奈良県初の市街地再開発事業により1982年に完成し、生駒の街の変容を永く見守ってきた建物である。
生駒で生まれ育った設計者も青春時代をここで過ごした一人であり、学生時代の部活終わりに当時営業していたスガキヤラーメンで仲間と空腹を満たした記憶が思い出深い。
また建物の共用通路につばめの巣が点在しており、これはビルオーナーが生駒山の自然や動植物との共生を大切にし保護してきたものであり、つばめの往来が今や春先の風物詩となっている。
街の賑わいを支えてきた建物が当時の活気を取り戻し若者カルチャーの再誕拠点となることを願い立ち飲みスタンドを企画。また街の変容と自然環境を大らかに包容する建物の在り方に共感し、店舗名を「つばめスタンド」に決定した。
店舗ブランディングでは若者や働き世代、生駒山に来る観光客やハイカーを顧客ターゲットに想定し、カジュアルで入りやすいお店づくりを目指した
ファサードは建物完成時に移設された宝山寺大鳥居をオマージュとして取り込み、ポップなイラストデザインの白暖簾とビニールカーテンのみのシンプルな構成にして、内部の様子が見渡せる誰もが入りやすい雰囲気を持たせた。
インテリアはコンクリート素地の空間に厨房を囲むコの字カウンターを骨格とし、客席は円形テーブルを点在させて利用者が自由に配置できるようにし椅子を最小限とする立ち飲みスタイルに拘ったお店づくりを追求した。
カウンターには立ち飲みスタンドにおける椅子の必要性を議論する過程で生まれたクライミングロープを利用した「腰掛けスタイル」のアイデアを採用。機能もビジュアルも大変好評でつばめが電線に並んでいる様にも見えて店舗の強烈なアイデンティティとなっている。
生駒駅周辺では現在、公民連携による街の活性化プロジェクトが盛んに進められている。ふるさとがより良い街になることを願う一人として、このお店とともに街の賑わいが増えるきっかけとなれば嬉しい。




誰でも入りやすい視認性の高いファサードにはビル開業当時に存在した宝山寺大鳥居をオマージュとして取り込んだ。



既存RC躯体の空間に木ベニアのカウンターと造作家具を配置したインテリア。天井は半屋外的な雰囲気を狙ってガルバスパンドレルを採用。


店舗の骨格を成すコの字型カウンターには椅子を設置しない代わりにクライミングロープを使った「腰掛けスタイル」を採用。利用者が電線に並んだツバメの様にも見えたりイナバウワーをして楽しむ友人もいたりと使い方は自由でお店のキラーアイテムとして大活躍。

天井のガルバスパンドレルは照明用配線ダクトがすっぽりと納まる形状を選定し空間のノイズを少しでも抑制。

ラーチ合板を用いた立ち飲みテーブル。天板高さを少しずつ変えることで連結可能としてフレキシブルなテーブル配置に対応。

店内奥に一つだけ用意した個室の壁には店舗ロゴを含むVisual Identity全般を担ったアーティストthetaによるライブアートが描かれ空間に華やかで爽やかな彩りを添えた。

カジュアルで爽やかなデザインの暖簾。こちらのデザインもアーティストthetaによるもの。

店内の壁に貼られた宅建取引業の登録票。「つばめスタンド」は立ち飲みスタンドでありながら株式会社SHiLOの拠点で不動産相談ができる場所でもある。サインにはブルーアクリルを用いてネオンサインの水色と同調。
Photo by Megumi Takimagari

1982年、宝山寺大鳥居が移設前の「グリーンヒルいこま」オープン時の風景
